DE NON  DCD7.5

   
dcd7.5

 プレスタというミニコンポのシリーズの中のCDプレーヤーで、おそ らくシリーズ初代のものでしょう。わが家ではマッキントッシュのカーオーディオとMC275風ミニチュア真空管アンプのコンビに とって代わられるまで寝室 用として使っていました。古いものですが、これが案外聞けました。DACはバーブラウンのPCM56で、ディジタルフィルターは 4倍と8倍が切り換えられ るセイコーNPCのSM5840です。このモデルがどちらで動いているのかは分かりません。カタログに誇らしげに8倍をうたって はいないので4倍というこ ともあるのかもしれませんが、メーカーがわざわざデータの劣る方を採用するかは疑問です。前項で述べましたが、PCM56は評判 の高いICで、(R2R) 抵抗ラダー型の16ビット制御です。音は積分型やフィリップスのTDA1541(DEM型)系の良く出来たプレーヤーに比べると 高域に細さと輝かしさが 乗ってわずかなつぶれがありますが、ノーマルの状態のいくつかのTDA1541機よりは自然な鳴り方をします。ビットストリーム 機との比較ではヴァイオリ ンの弱音から強く弾くところまでの差があり、やわらかなパッセージのなかで時折きらっと輝く音に魅了されます。そしてこれが8倍 オーバーサンプリングだっ たとして、同じバーブラウンのマルチビットで後発の1702(20ビット8倍オーバーサンプリング)機と比べてもこの56(16 ビット)の方が、鳴ってい る音全体に厚い艶があるとかのバランス上の話ではなく、音色の差ではやはり優れているように感じます。また、ミニマックス(E S S 9 0 1 8)はきれいな音ですが、どの音もきらっときれいに鳴り続けている印象で、やはりこの7.5に表情の豊かさでは負けている印象です。DCD1500や 1300と比べるとフィルターの次数が上がった分だけ表情が減っているはずなのですが、1500も1300も回路の素子に癖のあ るものが入っているのか、 もう部品が死んでいるのか、
ノー マル状態では前へ 出るうるさい感じが若干あるため、7.5の方が明らかに劣っているとは言えない感じです。

   このモデルは後にPCM61(18ビット制御)と8倍オーバーサンプリング専用の石に変わった
DCD7.5E に発展しましたが、そちらは他の回路こそそっくりでありながら明らかに7.5より生気がなく、比較するとディテールもつぶれて聞こえ ます。ということは、 ラダー型マルチビットの機械はディジタル・フィルターの次数も関係するながら、全般に古い方がナチュラルな音なのかもしれません。良 くても4倍オーバーサ ンプリングであろう特徴のなさそうな廉価なこのミニコンポが、どうかするとその何倍も値の張る最新のプレーヤーよりも満足できる音に 聞こえる場合があると いうのは、技術開発はいったいどこに向かっているのでしょう。こんなことを書くとひねくれ者だと思われます。
 



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