DENON  DCD1300/1500(初代)

   
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       上段が1300、下段が1500のフェイスパネルですが、中身が入 れ替わっているため表示部が逆になっています。下段のトレイ上下のモールは外れてます。

 80年代のCD プレーヤー二台です。当時よくあったデザインですが、状態の良い中古は少なくなりつつあります。どちらも音色の素直さで有利な低次の 2倍オーバーサンプリ ング・ディジタルフィルターを搭載している抵抗ラダー型のマルチビット機で、1300の方はバーブラウンPCM56 ×1、1500はPCM54×2のDAコンバーターICを用い、1300の方が低価格モデルながら後発でした。1500という型番は最近のモデルにも使わ れましたが(アルミ色のフェイスパネルです)、ここに取り上げるのはそれではありません。これらの機種が出た頃はCDという媒体自体 が普及し始めた頃で、 音の良いメーカーとしてマランツ (フィリップス)とデンオンは双璧のように言われていました。同時期で同価格帯のマランツCD−650と比べると、中高域にいくらか固まったソリッド感が あるながら高域のうるさくない、落ちついたバランスのマランツに対し、このデンオン(現デノン)二つは高域の繊細さはより出るものの もっと馬力のある、中 域の押し出しの強い音のように感じます。真空管出力モデルに時折聞かれることがある音の作られ方に近いとでも言いましょうか。 1500の方が若干低音寄り で、1300の方が元気が良いように聞こえますが、古いものゆえ固体差かもしれません。オンキョーの項でふれた多田オーディオでは内 部の素子をブラック ゲート化するなどチューニングして売っているようで、そうするとかなり良くなるとのことですが、それは聞いたことがありません。た だ、改造するベースとし ての素性はかなり良さそうな気がします。音に潰れた感じが少ないので、いじり方によっては繊細な方向へ持って行けるかもしれません。 音色の差が少なくて高 音が硬くなって飛んでくるような出方の現代のΔΣ系モデルとは違います。オンキョーの積分型ほど自然ではなく、メガホンのように中域 が前へ出てくる傾向も 感じたので今回は部品交換には及びませんでしたが、バーブラウンのPCM56というチップが今でも音の良いものとして使われることが ある(香港の MHDT製 Havana や Stockholm など)という事実を裏付ける素性の良さがあります。ただ、改造したマランツのCDA−94(ノン・オーバーサ ンプリング)や Naim CDSといったフィリップス系の機械と比べると、無改造の時点ではフィリップス系(どちらもTDA1541A)の方が滑らかで繊細に聞こえます。コンデン サーなどの部品を変えて行くとこれが逆転して抵抗ラダー型+2倍オーバーサンプリング・ディジタルフィルターの当機の方が良くなると いう意見も聞くのです が、果してどうでしょうか。
 
後記:抵抗ラダー式の DA コンバーターを部品交換によって納得できるレベルまで追い込み、フィリップス型のコンバーターと比較試聴する作業は、その後入手した Lo-D のコンバーターでやってみました(Lo-D HDA-001)。 その際、Lo-D のアナログ・フィルター(アクティブ型)の部分にDCD1500 のアナログ・フィルター(パッシブ型)を移植してみたのですが、1500のフィルターには銅箔スチロール・コンデン サーが使われて おり、にぎやかな色が乗っていることが分かりました。それを Xicon のアルミのスチロール・コンデンサーに替 えてみるとかなり良くなりましたが、それでもまだフェライトコアのコイルが不透明感に寄与しているのか、輪郭が若干強調されて輝かしくなる感じが残っ ていました。したがってこれら DENON のプレーヤーの持つ元気の良さはアナログフィルターにも一因があるようです。1300の方も次数は低いながら同じようなパッシブ・フィルターですので(コ ンデンサーはマイラー系か何かのフィルムでした)同じだと考えても良いでしょう。逆に言えばここをいじれば音の性格 が大きく変わる可能性のある有望な機種 だと思います。実際、Xicon に替えた1500のフィルターも、Lo-D に移植した状態では輝かしい色が乗りましたが、その後コンデンサーはそのままにして再度1500に 戻して聞くと、これがなかなか素晴らしい音でした。この値段の機種でアナログ・フィルターにムラタなどの簡易な集積パッケージ品を用いず、基板に部品展開しているというの は音質面において大変有利で、よくがんばったものです。一個数十円のコンデンサーを数個替えるだけでここまでのバラ ンスになるのなら、STUDER や フィリップス、メリディアンなどの当時の名器を高いお金を出して中古で買わなくても最高水準のナチュラルな音をCD から引き出すことができると言えます。 
     



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