CDプレーヤー夢想   

  これまでの記事で行った実験比較から思い描ける理想のCDシステムについて述べてみます。まず、ピックアップ部とDAコンバーターは 分かれていた方がいい でしょう。SPDIFという両者の接続規格についてはクロック一体という点で問題があるものの、現状ではこれ以外の方法が一般に採用 されてないので仕方が ありません。ピックアップ部分、つまりCDトランスポートは物理的可動部を持った光学機器であり、レーザーダイオードやモーターが時 間とともに弱ります。 メーカーが存続する限り部品を供給してくれるような体制なら一体型CDプレーヤーの方がいいですが、そういうわけにも行きません。

 ピックアップについては本来、フィリップスのCDM1のようにガラスレンズを使ってダイキャストのフレームに入れたような寿命の長 い製品がいいのです が、今安定供給されているのは同じフィリップスのCD−PRO2ぐらいでしょうか。スイング・アームというのは無理がなくて良い方式 だと思います。ただ、 今使っている CEC のベルトドライブのトランスポートで音の面ではほぼ満足なので、一番気になるのは
DAコ ンバーター部分ということになります。

 そのDAコンバーターについては、ちょっと考えられない話ですが、DSDや192KHz/24bit などの音源が将来CD並に供給される時代が来るなら、それに対応した回路が必要になるでしょう。DSDなど、なるべくシンプルな手順でアナログに戻せば良 い音が出てくる可能性は大きいと思います。しかしCDについてはそうしたハイ・レゾリューションに対応した現行のDAコンバー ターICで処理するのではなく、それとは別にCD専用の回路で行った方が良さそうです。

 CD情報のアナログ化に関しては、各プレーヤーの項で述べた通り、最近のアップサ ンプリングを施すビットストリーム機よりも昔の16ビット専用機の方が表情の変化が大きいようです。なかでも方式としては積分型と抵 抗ラダー型の結果が良く、ソニーのCX20152 やバーブラウンPCM53、 54、56などのICチップを使いたいです。PCM1704で 宣伝されていたレーザー・トリミングの技術で上記のようなIC を作ってくれたらなあ、などと思わなくもありません。DEM 型のフィリップスTDA1541Aに ついては、2倍オーバーサンプリング・ディジタルフィルターにしてアナログフィルターを集 積型でないものにするという実験を行っていないので何とも言えないところです。そしてそれよりも、部品を厳選し て DA コンバーター部分を全てディスクリートで組めるなら理想的かもしれません。

 ディジタルフィルターは使わない(NOS)か2倍オーバーサンプリングにしたいところです。アナログ・フィル ター部分の負担が少ないので2倍のディジタル・フィルターを用いるのが最善かもしれません。

 アナログ・フィルターは現在は
DAICに 組み込まれていますし、昔も出来合いのパッケージ品がよく使われていました。しかしディスクリートで組むのが最 も良い方法です。その場合コンデンサー類は 今や選択肢が少ないですが、スチロール・コンデンサーが一番素直な音になります。シーメンス製なら理想的です。 アクティブ型であればアンプが必要となって きますが、オペアンプを使うなら最低でも MUSE01/03 ぐらいのナチュラルな音のものにしたいところです。

 C−700のように途中の伝送部分に光ファイバーを使う方法はどうも採用しない方が良さそうです。光に変換す ることでディジタル・ノイズをいったん切り 離すという試みのようですが、変換する際に通る回路が増える分だけ音質劣化も起きやすくなるのだろうと思いま す。同軸入力と光入力の両方を備える機器で実 験をするとたいてい同軸入力の方が音が良いことからもそれは分かります。同じ理由からバランス
伝 送という工夫も要らないと思います。ヘッドフォン・アンプ、入力ボリュームやエラー・カウン ター、入力切り替え表示インジケーターなどの余分なものも付けない方が良いでしょう。

 電源回路は重要で、アナログ部に関しては大きな容量にするこ とに 意味があるようです。大型のトロイダル・コアのトランスを使ってディジタル部と分けた方が良いかもしれません。 低い方からエネルギー感が出て、音にある種 のリアリティが感じられるようになります。整流ダイオードやレギュレーターもローノイズのものを使うことで大分 違いが出ますが、三端子レギュレーターはト ランジスタなどを基板に展開したディスクリートのものを使用すると結果は良いながら壊れやすいので、音を吟味し て LM317 などの通常品で行く方がいいでしょう。

 コンデンサーや抵抗といった各部品は音に重要な影響を与えます。いくら回路が良くてもそれが一つだめだと台無 しになります。
 電解コンデンサはブラックゲートが良いですが、製造中止でオークションなどでしか手に入らないので揃え難いの が難点です。他のもので行くならタンタルやフィリップス/VISHAY の電解、オーディオ用ではない国産のスタンダード品などを使い分けることになるでしょう。

 ビタミンQ のオイル・コンデンサも癖がなくて良いものです。フィルム・コンデンサは前述の通り、小さい値ならスチロールが音が一番素直です。数 uF のレンジとなるとインターテック錫箔 KPSN など
、 スピーカー用のも のに良い音のものがありますが、サイズは大 きくなります。
 抵抗については、金属箔は非常に高価です し、多く使うと鋭くなり過ぎる場合もあるよ うです。金属皮膜は音に個性が出ますのでよ く選ぶ必要があるでしょ う。同時にカーボン皮膜も併用するといいか もしれません。粗悪でやかましくなるカーボ ンもありますが、最近はタクマンREXな ど、精度の高いカーボン皮膜 も出ています。ソリッド・カーボン(カーボ ン・コンポジット)のタイプは音は落ち着い ているので良いですが、経年劣化には若干弱 いようです。耐圧の大きな 場所には DALE の無誘導巻線抵抗や KOA のシリコン・コーティング SPR などを使って良い結果が得られました。

 I/V変換部や出力部はオペアンプでもい いと思います。
MUSE 01/03、ナショナル・セミコンダクター の LME49990、ア ナログ・デバイセズのOP42などを使いた いです。出力部 は真空管方式でも良いでしょうが、カッ プリング・コンデンサーとチューブ自体を選 ばないといけません。仮 に良い真空管が見つかっても寿命があります ので割高にはなると思いますト ランジスタのディスクリートで組めれば理想 的ですが、その場合も部品は厳選する必要が あります。MUSE のオペアンプより質が良くならなければ意味がないでしょう。基板に組んだパッケージ品も売っていますが音は確認していません。

 以上のような構成のDACを何の飾りもな いフェイスパネルに電源スイッチ一つだけが ついたシンプルな箱に収め、同じデザイン・ ポリシーのトランスポート とアンプを用意できればそれが理想です。で も音に関しては今のアンプとトランスポート には特に不満がありません。


  
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